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交通事故の慰謝料相場を解説 (2025.07.10)
交通事故に遭った際、けがや精神的な苦痛に対する「慰謝料」が支払われる場合があります。
しかし慰謝料の金額には幅があり、相場がわかりにくいと感じる方も多いかもしれません。
今回は、交通事故における慰謝料の種類と相場、算定基準をわかりやすく解説します。
交通事故の慰謝料とは何か
交通事故の慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償の一種です。
大きく分けて、以下の3種類があります。
l 入通院慰謝料
l 後遺障害慰謝料
l 死亡慰謝料
それぞれ解説します。
治療や入通院に対する慰謝料
けがをして通院や入院が必要になった場合、その負担に対して慰謝料が発生します。
いわゆる「入通院慰謝料」で、通った期間や程度に応じて金額が決まります。
後遺障害が残った場合の慰謝料
けがが治っても障害が残った場合には、「後遺障害慰謝料」が支払われます。
等級によって金額が大きく異なり、等級が重いほど高額になります。
死亡事故の場合の慰謝料
被害者が亡くなった場合は、遺族に対して「死亡慰謝料」が支払われます。
遺族の人数や被害者の立場によっても金額に差が出ます。
慰謝料の相場を左右する3つの基準
慰謝料には、明確な法律上の金額はありません。
実務的には、以下の3つの算定基準が使われています。
l 自賠責基準
l 任意保険基準
l 弁護士基準(裁判基準)
それぞれ確認していきましょう。
自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険で定められた最低限の補償額に基づく計算方法です。
l 入通院慰謝料:1日あたり4,300円(上限あり)
l 後遺障害慰謝料:等級に応じて異なる
l 死亡慰謝料:遺族の人数によって加算(上限3,000万円)
3つの基準のうち、金額が最も低めに設定されています。
任意保険基準
任意保険基準は、保険会社が独自に設けている基準で、自賠責よりやや高めに設定されている場合がほとんどです。
ただし具体的な基準額は公開されておらず、提示額は保険会社ごとに異なります。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準は、裁判所が過去の判例などをもとに採用している基準です。
l 入通院慰謝料:数十万円から数百万円(軽傷・重症や通院・入院の条件による)
l 後遺障害慰謝料:14級で110万円、1級で2,800万円程度
l 死亡慰謝料:2,000万円〜2,800万円程度が中心
慰謝料の金額は、自賠責基準や任意保険基準に比べて高額になる傾向があります。
入通院慰謝料の相場の目安
入通院慰謝料は、治療期間と実際に通院した日数をもとに算定されます。
自賠責基準では「実通院日数×2」と「治療期間」の少ない方に、日額4,300円をかけて計算されます。
たとえば通院6か月、通院日数50日の場合、計算式は以下の通りです。
50日×2=100日
100日と6か月(180日)のうち少ない方=100日
→100日×4,300円=43万円
弁護士基準(むち打ちや擦り傷などの軽症)では、通院6か月の場合の入通院慰謝料は、「89万円」が目安になります。
後遺障害慰謝料の相場の目安
後遺障害慰謝料は、障害の等級に応じて支払われます。
【自賠責基準による後遺障害慰謝料】
l 1級(常時介護):1,650万円
l 2級(常時介護):1,203万円
l 1級(随時介護):1,150万円
l 2級(随時介護):998万円
l 3級:861万円
l 4級:737万円
l 5級:618万円
l 6級:512万円
l 7級:419万円
l 8級:331万円
l 9級:249万円
l 10級:190万円
l 11級:136万円
l 12級:94万円
l 13級:57万円
l 14級:32万円
1級・2級には「常時介護」と「随時介護」の区分があり、介護の必要度によって金額が異なります。
【弁護士基準による後遺障害慰謝料】
l 1級:2,800万円
l 2級:2,370万円
l 3級:1,990万円
l 4級:1,670万円
l 5級:1,400万円
l 6級:1,180万円
l 7級:1,000万円
l 8級:830万円
l 9級:690万円
l 10級:550万円
l 11級:420万円
l 12級:290万円
l 13級:180万円
l 14級:110万円
自賠責基準は最低限の補償を目的とした制度のため、実際の損害額に比べて慰謝料が低くなりがちです。
適正な金額を受け取るには、等級の見直しや交渉が必要です。
死亡慰謝料の相場の目安
死亡慰謝料は、亡くなった本人と遺族が受けた精神的苦痛に対する補償です。
自賠責保険基準の場合、本人400万円(2020年3月31日以前に発生した事故であれば350万円)と、遺族の人数に対して以下の加算があります。
l 遺族1人:550万円(350万円+200万円)
l 遺族2人:650万円(350万円+300万円)
l 遺族3人以上:750万円(350万円+400万円)
l 被害者が一家の支柱の場合は上記に200万円を加算
弁護士基準の場合、以下が相場の目安です。
l 一家の支柱:2,800万円
l 母親や主婦など:2,500万円前後
l その他:2,000万円〜2,500万円前後
個別の事情(家族構成・社会的背景など)により、上記金額が調整される場合もあります。
慰謝料の金額に納得できないときの対処法
保険会社から提示された金額が、自賠責基準や独自基準によるものである場合、本来の相場より低い可能性があります。
そのまま示談に応じると、十分な補償が得られない可能性があるため注意が必要です。
慰謝料の金額に納得できない場合は、弁護士に相談し、弁護士基準に基づいた補償を受けるのが最善の策です。
弁護士は、保険会社との交渉や訴訟対応を代わりに行ってくれます。
特に後遺障害や死亡事故では、数百万円単位の差が出るケースもあるため、大きな利点があります。
まとめ
交通事故における慰謝料は、けがや後遺障害、死亡といった被害の内容に応じて支払われる精神的損害の補償です。
金額は「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあり、基準によって大きな差が出る場合があります。
適正な慰謝料を受け取るには、基準の違いを理解するのが重要です。
必要に応じて弁護士に相談し、納得のいく示談交渉を進めましょう。